殺してあげる
3時間後、私は相変わらず同じ格好でソファーに深く座って頭を後ろに倒したまま。
膝の上にはノートパソコン。
無音のこの部屋にはパソコンから発せられる機械音しか聞こえない。
ふわりと空気が動く気配を隣に感じ、上を向いたまま目を開けて深呼吸した。
嗅ぎ慣れた血の腐った臭い。
ちゅぱちゅぱと何かをしゃぶる音。
私は静かに目を閉じて、再度大きく深呼吸をした。
右肩に心地よい重さを感じたのと同時にきつくなる血の臭い。
「ぜんぶ、終わったの? キクカワ」
「……おわった」
「そう」
「……」
「これで終われるのかな?」
「……」
私の肩に顔をうずめるキクカワは、無駄に大きい体を小さく丸めてすり寄って、顔色を伺いながら、ゆっくりと腕を回して甘えてくる。
血のついた指をきれいに舐めとり、薄汚れた服で執拗に指をこすりつけ、自分の中できれいになったと思ったあと、私にすり寄り、べったりとくっついて離れない。
子供が親に甘えるような感覚なんだろうか。
でも、嫌じゃない。
というよりも、この状態にもう慣れてしまった。