殺してあげる

今までの何年間もの思いと、今まで関わってきた人たちの顔がフラッシュバックして、

自分の中のいろいろな想いとやってきたことの重さがどんと全身に乗っかってきて、

そこから解放されないと確信したショックで一気に涙が溢れ、頬に伝い、電話を持つ手に力が入らなくなった。


泣きたくなんかないのに、こんなこと、きっと最初から分かっていたはずなのに。



『加穂留、泣かないでよ。これではまるで僕が君をいじめているみたいじゃないか。僕はそんなことしないよね。ね? ね? ネ』



あの人は私を解放する気がない。

永遠に使われるんだ。


『カホル』


最初から嘘だったんだ。

こいつの話にいいように乗せられて、使われていた。


『カホル、僕の話聞いてるの? ぼく、きみに、はなしているんだよ』


私は……


確かにこいつには恩があるかもしれない。
ここにこうやって生き残らせてくれたっていう恩。

そして、今ここにいることの幸せさやありがたさを教えてくれたのも、悔しいけれどこいつだ。


でも……



『カホル。何も言わないなら賭け事、もう始めちゃうよお』



キクカワはどうなるんだろう。あれはまだ一人じゃ何もできない。



「キクカワは」
『あ、やっとこっちに戻ってきてくれた。もう少し遅かったら僕もう電話を切ってたよ。だめだよ僕のことを無視しちゃ。きみの立場、分かってるよね』
「キクカワはどうなるの」
『あれえ、僕のことはスルーうー? んー、そんなにキクカワ君のことが気になるのかなあ』
「どうなるの」
『んー、さあ。どうなるんだろうね。君がここを去った後のことになるからね。僕が彼をどうこうしようと君には一切関係なくなるよねえ』
「だってそれじゃ」

『ああ、そうだよ。きっと君の考えている通りになると思うんだよね。それに僕、キクカワ君てあんまり好きじゃないんだ。はははは』

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