殺してあげる

「殺すってこと？」
『さあ。それは彼次第だよね』
「キクカワには、まだそんなこと、無理だよ」
『へえ、そうなんだ。でも君はさっきもう独り立ちできるってはっきり言ったよ。僕、聞こえたよ』


こいつ……


『加穂留、顔顔。怖い顔してるときれいなお顔が台無しだよ』
「見えてるの？」
『だって、僕のうちだもん』


私がやっていることはすべてこいつに教えてもらったことだ。
当然ながらこうなるに決まっている。

じゃあ、この後キクカワを野放しにしたら……


キクカワをひとりここに残して私が去ったら、あいつはきっととめどなく、ココに来た全てのものを殺しまくる。
楽しんで殺して手がつけられなくなって、きっと最後にはこいつに……

ここは本来そういうところじゃない。
だから私はここにいる。もちろん何人もの人がナオラナクテ、手にかけたりもしたけど、でも全てじゃない。


誰かがいないとあいつは簡単に凶器になる。

そして……

『心配しなくて大丈夫だよ、ほら、彼をハントしたい人たちってきっといっぱいいると思うんだよね』
「ハントって」
『今迄のことに恨みや怒りや殺意を持っているのって、たーくさんいるでしょ？　僕、そういうの集めるの得意だしさ。そろそろ次のステップへ進まないと。ほら、お客ってみんな我が儘だからさ、ワンパターンだと飽きちゃうんだよね。わかるでしょ？』

キクカワは確かにおかしいところもあるけど、悪い奴じゃない。
それに、少し変わっていて不気味だけど、それなりに従順な男だ。
殺人鬼に変えたらもう元には戻れなくなる。


『じゃあ、もういいかな。そろそろ始めちゃうけど、いいよね。くくくくくく』





「………待って」