殺してあげる
「今日も暑いですね、どうですか、まずはそこでショーでも見ませんか?」
「いいですねそれ、私暑いの苦手なので、涼しいところでお芝居とか見るの、賛成」
「よかった」
子供みたいな笑顔に一瞬クラッときた。この人と一緒に逝けるなら、今すぐ死んでも悔いはない。
手を繋いで、寄り添って、最期を迎えたいな。
『加穂留』
頭の中に入ってきたのは加穂留の写真の顔。
この人とどういう関係なんだろう。付き合ってるとか? いやいやないない、だってここ自殺サイトだよ。そんなのありえない。もしかして、けっこうたくさんの人がいて、集団になるのかな。
だとしたら、先にこのサイトに入ってた人が新入者を案内しに来たと考えてもおかしくないよね。
「サトミサマ、手を繋いでもいいですか?」
はにかむ笑顔で手を差し伸ばされたら、思わず掴んでしまう。
「もちろん」
「よかった」
ひんやりしているキクカワの手は気持ち良かった。
私たちは手を繋いだまま、目的の場所、『新戒の刃』というショーをやっているところまで、歩いた。
後ろから着けてくる人影になんて気づきもしなかった。