殺してあげる
目の前には白い階段が数段。デッキに上がるためのものだが、そこは海水で濡れている。
手すりにつかまりながら上がり、デッキに出たところで照りつける暑い日差しに視界がぼやけ、手で顔を覆い、目を細めた。
「まじで海かよ。なんで俺こんなところにいるんだよ」
かなりのスピードで進む船。いや、小型のボートか。
もう、この際なんでもいい。船でもボートでもさして変わりはない。
360度ぐるりと囲む青い水。
海。
これはどこへ向かっているのか。てか、操縦士はだれなのか。
加穂留か?
そうだ、加穂留と一緒にいたんだから、あいつだってここにいるはずだろう。
だとしたら、あいつも何が起きているのか分からないはずだ。