殺してあげる
『鼻をさわる』
それだけが俺の頭の中で繰り返され、サメの鼻サメの鼻サメの鼻サメの鼻………と、声に出していた。
海面に浮かぶように、寝るように浮かび、なるべく体を動かさない。
サメは背鰭を海面に見せ、ゆったりと泳ぎ、沈む。
直後、感じたことのない激痛が足に襲う。
すごい力で引きずり込まれた。
真っ赤な血が噛まれた足から流れ、視界が悪くなる。
逃げようと海面に向けて顔を上げ、手を振り回す。
サメの口の中から逃れようと、もがく足に、鋭いサメの牙が強く食い込んだ。
『モガイチャダメデスヨ』
加穂留の言葉が頭に戻る。