殺してあげる

足のあるべきところに手を当てたが、触れるはずのない足の内側の肉に手が触れ、真ん中のがつっとした骨に指が触り、



悲鳴をあげた。



恐怖を緩和するためには、それ以上の何か感情を爆発させようとする。



それが、悲鳴となる。



手にべったりとついた血。


隠したい。


サメに血の臭いを嗅ぎ付けられたら、今度こそ喰われる。


血を隠したい。

隠したい。

隠したい。

隠したい。

隠したい。

隠したい。

隠したい。



血のついた指を……







自分の血を、自分の血のついた指を、自分の口の中に入れ、舐めて、全てを吸い取った。


足のつけねに手を這わせ、血を拭き取るように掬い上げ、口に運んだ。


何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も。



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