殺してあげる
「サトミサマ!」
不意に呼ばれた自分の名前。
キクカワと手を繋いだまま振り返ると、そこには見たことのない女の子。
茶髪のメッシュにつけまつげ、短いショートパンツにスニーカーというラフな格好の女の子が息を切らしながら駆け寄ってきた。
こんな子、知らない。
キクカワに視線を走らせたが、彼は無表情でその女の子を見ているだけ。
「サトミサマ、ごめんなさい。用事が立て込んじゃって、遅れました」
「だれ?」
「や、やだなぁ。加穂留ですよ。もう、忘れたんすか?」
「加穂留?」
「そうです」
確かに、加穂留の写真を思い出してみると、こんな感じだった気がするけど、こんなギャルギャルしかったっけ?
もっとこう、清楚な感じがしてたような。
「………てかんじで、キクカワに来てもらったんすよ。って、サトミサマ聞いてます?」
「あ、悪い悪い、ごめん、ボケッとしてた。聞いてる」
こんな口調だった? こんな昔のヤンキーみたいな話し方だった?
メールは違った気がする。
でもこの子、頭悪そうで、使いやすいかも。
この加穂留って子、扱いやすいかも。
うん、こういう感じの子は、嫌な気はあまりしない。