殺してあげる
「ここのショー、面白くて有名なんですって。だからサトミサマと一緒に見たくて」
「へぇ、そんなのがあるなんて、さっき初めて聞いた。その、あれだ、キクカワさんに?」
「キクカワにっすか? あいつ無口だからちょっと気持ち悪かったんじゃないですか?」
少し後ろを歩いてついてくるキクカワの方をチラッと見て、加穂留は小さい声で耳打ちした。
この感じからして、あまり好意的には見てないってことか。
そんな加穂留の態度に少しだけほっとした自分を複雑に思った。
パーク内を奥の方へ歩くが、周りには私たち以外に誰もいない。
時おり聞こえる鳥の囀り(さえずり)が妙に不気味に感じ、何度も辺りに目をやった。
誰かいるわけじゃないんだけど、なんだか得体の知れないものがそこにあるような、私の回りを黒い幕のようなものが覆っているような、そんな気がしてならなかった。