殺してあげる

「ここのショー、面白くて有名なんですって。だからサトミサマと一緒に見たくて」

「へぇ、そんなのがあるなんて、さっき初めて聞いた。その、あれだ、キクカワさんに?」

「キクカワにっすか? あいつ無口だからちょっと気持ち悪かったんじゃないですか?」

少し後ろを歩いてついてくるキクカワの方をチラッと見て、加穂留は小さい声で耳打ちした。

この感じからして、あまり好意的には見てないってことか。

そんな加穂留の態度に少しだけほっとした自分を複雑に思った。


パーク内を奥の方へ歩くが、周りには私たち以外に誰もいない。


時おり聞こえる鳥の囀り(さえずり)が妙に不気味に感じ、何度も辺りに目をやった。


誰かいるわけじゃないんだけど、なんだか得体の知れないものがそこにあるような、私の回りを黒い幕のようなものが覆っているような、そんな気がしてならなかった。


< 82 / 204 >

この作品をシェア

pagetop