殺してあげる

到着した場所は薄暗い場所。

今は使われていない病院の跡のような建物で、本当に人の出入りがあるのかすら疑わしく見える。

どう考えても、きっと、人の出入りはないだろう。

だって。

蜘蛛の巣は辺り一面に張ってるし、ドアも壊れている。



見た目、お化け屋敷。


おかしい。



「ねえ、これって、お化け屋敷なんかじゃないの?」
「あは、やっぱそう見えます? でもこれも演出なんで……なんですよね。私も最初びっくりしましたから」
「………へー、来たこと、あるんだ」
「何回も」
「何回も?」
「あ、キクカワ」


なんで何回も来たことがあるのか聞こうとしてたところで、加穂留は後ろにいたキクカワを呼び、手招きした。

キクカワは小走りに近寄ってきて、そんな光景を見ていると、なんだかキクカワが不憫に感じた。


もしかしたら加穂留にいいように使われているのかもしれない。

そう思ったらなんだか、なんとも言い様のない気持ちになった。


胸をくすぐるというか、加穂留と私とは違うと思わせたいというか、



兎に角、よく理解できないけど、そんな複雑な気持ちだ。


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