殺してあげる
お化け屋敷のような劇場の中は薄暗く、ひんやりとしている。
客席にはやはり誰もいない。
ステージを見下ろすかたちとなっているこの劇場は、ボロボロ。
本当にこんなところに人が入ってるんだろうか。
騙されてるんじゃないかと不安になる。
「そうだ、サトミサマ、私ちょっと飲み物買ってきますね。
キクカワと二人きりになってしまいますけど、ちょっと辛抱しててください」
加穂留はキクカワに一言二言命令すると、さきほどとは違うドアへと向かって歩いて行った。
いきなり不安と恐怖に襲われた私は加穂留のあとを追いかけようと腰を浮かせ…………
「やっぱ、俺が作ったクッキー、口に合いませんでしたね」
「クッキー?」
そうだ、クッキー貰ったっけ。
後ろの座席にキクカワがいて、体を乗り出してくる感じですぐ近くにいる。
後ろから抱き締められる感覚に襲われる。
でも、嫌じゃない。