殺してあげる

焦げたにおいのするクッキーは、少しだけ硬く、苦味があった。

「あはは、うん、ちょっと硬いけど、うん、おいしいよ」

「ああ、そう言ってもらえると、嘘でも嬉しいですね。本当にありがとうございます」

嬉しそうに笑うキクカワの笑顔が嬉しくて、続けてもう1枚口に入れた。


うん、やはり苦い。


「加穂留とはね……」


キクカワが後ろから腕を私の胸のところに回してきて、びっくりして息を飲んだ。

「聞いてくれます?」
「も、もちろん」
「よかった」

硬めのクッキーを無理矢理飲み込むと、胸の前で両手に持っていたクッキーの袋の中にキクカワが手をいれ、1枚掴む。

袋越しに胸に手が当り、ドキドキした。

激しく打つ心臓の音を隠すように、高ぶった神経を落ち着かせるように、腹で深呼吸。


「どうぞ。ちょっと硬いけど。次回はもっとうまく作れると思う」


次回?


また会えるってこと?


そんなこと、あるの?



< 87 / 204 >

この作品をシェア

pagetop