殺してあげる
焦げたにおいのするクッキーは、少しだけ硬く、苦味があった。
「あはは、うん、ちょっと硬いけど、うん、おいしいよ」
「ああ、そう言ってもらえると、嘘でも嬉しいですね。本当にありがとうございます」
嬉しそうに笑うキクカワの笑顔が嬉しくて、続けてもう1枚口に入れた。
うん、やはり苦い。
「加穂留とはね……」
キクカワが後ろから腕を私の胸のところに回してきて、びっくりして息を飲んだ。
「聞いてくれます?」
「も、もちろん」
「よかった」
硬めのクッキーを無理矢理飲み込むと、胸の前で両手に持っていたクッキーの袋の中にキクカワが手をいれ、1枚掴む。
袋越しに胸に手が当り、ドキドキした。
激しく打つ心臓の音を隠すように、高ぶった神経を落ち着かせるように、腹で深呼吸。
「どうぞ。ちょっと硬いけど。次回はもっとうまく作れると思う」
次回?
また会えるってこと?
そんなこと、あるの?