今夜、きみの手に触れさせて
「あー、無理無理。あの子だって自分の勉強が忙しいだろ」
ヤスはそっけなく答える。
「頭いーんなら、そんなにがんばらなくても余裕じゃね?」
「いや、頭いいやつはいいやつで、上目指してっから大変なんだよ」
『頭いいやつ』でもないくせに、ヤスはわかったような口を利く。
「そっか、なるほど」
タケシや周りのやつらも、なぜかフムフムとうなずいた。
結局……受験生じゃないのはオレだけか。
わかってないのもオレだけ。
帰ろっと。
ひとりで歩き出したら、ヤスの声が飛んできた。
「あれ、純太、帰んのかよ」
「うん」
ちょっと振り向いて、うなずく。
「なんだよ、急に」と、ヤス。
「頭イテーから」
「は? さっきまであんなに、はしゃいでたじゃん。スネんなよ」