今夜、きみの手に触れさせて


「風邪ひいたんだよ。虚弱体質なの」


もう後ろは見ずに、ひらひらと手だけ振る。


「ったくもう、気分屋なんだからさー、純太は」


ヤスの呆れる声が耳に届いた。




「お~い、待て。オレも帰る」


追いかけてきたのは修吾だった。




「後ろ乗るか?」


チャリで来たらしい。




「今日部活ねーの?」


「あー、顧問が研究会でいないから、オフ。明日からみっちり練習あるしな」


と修吾は言った。




「デートでも、すりゃあいーのに」


オレがそう言うと、やつは鼻の頭をかいた。


「カノジョは塾で勉強するらしいし、言いそびれた」




修吾は自転車の鍵を開けながら、チラッとオレを見る。





「純太は? 高校どーすんの?」


おもむろにそう聞かれた。




「行かねー」


チャリの荷台にまたがりながら答える。




「なんで?」


「働く」




「家……大変なのか?」


修吾の声が低くなった。


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