今夜、きみの手に触れさせて
「別に」
「今はあれだぞ。助成金とか、奨学金とか、いろいろあるから、学費のほうは案外大丈夫らしいぜ」
若干言いにくそうに修吾は話す。
「知ってるし」
「純太んちなら、そーゆーの、いろいろ優遇されたり、あると思うよ」
「母子家庭だから?」
「あー、うん、まぁ……」
遠慮気味に、でもなんとか伝えたいらしい。
そーゆーとこ、めんどくせーのな、こいつ。
「頭悪いのに、高校行ったってしゃーねーもん」
「頭なら、オレだって悪いよ」
はぐらかしてみても、食い下がってくる。
「いーから、早く漕げって」
荷台にまたがってスタンバッているオレは、ハンドルを握って突っ立ったままの修吾に言った。
「お前なー」
オレの命令口調に苦笑しながら、修吾はチャリをまたいで地面を蹴った。
どんなに説明したって、
お前にはさー、わかんねーよ、修吾。
オレの気持ちなんて、絶対に。