今夜、きみの手に触れさせて


ゲ……。


部屋の前に行くと、一難去ってまた一難。


担任の前川が来ていた。




「なんだよ?」


思わず声が硬くなる。


「家庭訪問だ。進路相談」


40代のオッサン教師は、当たり前のようにそう言った。




「いねーよ、親」


「いや、お母さんとは約束してある。今日は早く帰られるそうだ。その前にお前の考えを聞いておこうと思ってな、一時間早く来た」


人の迷惑顔をシカトして、前川は言った。


2年のときもこいつが担任だったから、知らない仲ではない。


不登校だからって、ここにも顔を見に来たことがあるし。




「でもオレ、熱あるんだよね」


「だからどーした?」


ダルイからそう言ったけど、難なくスルーされた。



はいはい。


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