今夜、きみの手に触れさせて
ドアを開けると担任はズカズカと家の中まであがり込み、ダイニングテーブルの椅子にドカッと腰を下ろした。
「ん」と、あごでうながされ、オレもしゃーなしに向かい側に座る。
他人んちでデカい顔すんなよな。
「で? いつになったら学校に来るんだ、矢代」
重々しく前川は言った。
「あー、考えてねーけど……、なんか邪魔じゃね? みんな受験だろ?」
どーせ、この話になる。
「お前はしないのか、高校受験」
「うん。働く」
前川は腕組みをして、オレのことをジッと見据えた。
「どんな仕事だ?」
「え、別に。中卒で雇ってくれるんならなんだってするよ。より好みはしてらんねーだろ?」
「考えたことはあるのか?」
「何を?」
「どういう仕事に就きたいのか」
「給料もらえるなら何でもいいよ。考えたからって就けるわけじゃねーし」
重たい口調に負けないようにオレは言った。