今夜、きみの手に触れさせて
テーブルに色とりどりのパンフレットが広げられる。
「工業科や商業科、専門学校とか、就職に結びつけて考えられる進路もあるから、一度心を新たにして、ゆっくり目を通してごらん」
「う……ん」
「それからこれは夏休みの宿題」
前川はまたワサワサと、カバンからプリントの束や小冊子を取り出した。
「まぁたくさん出てるけど、他は捨てても、このプリント集だけは死ぬ気でやれ。基本中の基本が詰まってる」
あー、誰かが言ってたやつね。
「お前はいつも中途半端だから、この休み、これだけはやり遂げてみろ」
「えー、むずかしいよ」
「わからなかったら職員室に聞きに来ればいい。オレは夏休み中も結構出てるから」
そう言って前川は、プリント集の表紙に自分のケータイ番号を書いた。
「来る前に電話しろよ」
「うん」
「で、しっかりやり遂げたそれを引っ提げて、新学期、教室に出て来い、矢代」
なーんて前川は言った。