今夜、きみの手に触れさせて
そうこうするうちに母親が帰ってきて、三者面談のような形になった。
オレが就職希望だということを、前川が母親に告げる。
「そんなのダメよ」
途端に母親は反対を表明した。
結局のところ、
いい仕事に就けずに、途中で辞めてしまう。
再就職もきびしい。
学費は気にしなくて大丈夫だから。
高校ぐらい出とかないと世間体が悪い。
反対の理由は大体そんな感じだった。
頭ごなしに決めつけられるとムカついて、
前川と話して芽生え始めた気持ちも萎えてくる。
プイッと横を向いたオレに、前川は言い聞かせるように言った。
「お前、ありがたい話じゃないか。感謝しなさい」
今にも泣き出しそうな母親にも、前川は言ってくれた。
「純太くん本人にも、いろいろ考えさせてやってください」
そうしてオレたち親子に向かって課題を出す。
「長い休みです。おふたりでよく話し合って結論を出しておいてください」
そんな言葉を残して、前川は帰って行った。