今夜、きみの手に触れさせて


部屋の隅にある布団に横たわり、オレはそのまま眠ってしまったようだった。




目が覚めると部屋は薄暗くて、でもキッチンには灯りがともっていた。


額がひんやりと気持ちいい。


いつのまにか熱冷ましのシートが貼っつけられてあった。


肌掛け布団もかかっている。




あてつけ……か。


そうなのかもしれない。


ハン、ガキだな。ありえねー。




トントンと、夕飯のしたくをする包丁の音を聞きながら、オレはまた、うとうとしていた。








ん……?


人の気配がする。




ピタッと首筋に冷たい手が添えられた。


母さんの手だ……。




そう気がついた瞬間――



ハッと息を飲むのと、

その手を思いっ切り跳ねのけるのと、

ガバッと身を起こすのが同時だった。



心臓が凍りつき、身構えた体が硬直している。


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