今夜、きみの手に触れさせて
「そっか、じゃあ青依は自覚しちゃったわけだ?」
夏期講習の休み時間、矢代くんに対する想いを、わたしは律ちゃんに打ち明けた。
「うん……。好きみたい。おかしいよね?」
「全然」
律ちゃんは即答してくれた。
「でも、ちょっと心配かな」
手が早そうで軽そうな彼は、男の人に免疫のないわたしには合わないって、律ちゃんからダメ出しされていた。
「見てるだけだから安心してね」
わたしが言うと、律ちゃんは苦笑する。
「どこで見るのよ? 学校来ないのに」
「ああ、うん……」
そこなんだ。
「でもまぁ、想ってるだけでいいかも」
彼女になろうとか思ってないし、
いや、なれるとは思ってないし。
会えば、どーせ、ちゃんとしゃべれなかった自分にヘコむんだし。
なのに……
会いたくなるのは、どういうワケ?