今夜、きみの手に触れさせて


今日だってここへ来る前、あのコンビニまで回り道をして、欲しくもないお茶を買ってきたんだ。


偶然の出会いを期待して……。


もし矢代くんがいたら、あわてふためくくせに。




でも今度会えたら、自分から笑いかけてみようか?


いや、無理無理無理無理。




わたしにできることは……




あの日の矢代くんの笑顔を励みにして、こっそりこの夏を乗り切るぐらいだ。うん。




そう思ったとき、突然律ちゃんが言った。


「今度ふたりで、矢代くんちに遊びに行こっか?」


「えっ?」


「差し入れでも持ってさ」


「ええっ?」


「きっと何人も集まってるんだろうし『みんなで食べよ』って、お手製のスイーツでも持ってったらいいじゃない」


「えええっ?」


「『矢代くんもひとつ食べる?』なんて言ってみたらどうかな?」




律ちゃんって、すごい!


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