今夜、きみの手に触れさせて
「青依ってそーゆーの得意じゃなかった? 前においしいドーナツ作ってきてくれたよね」
「あー、うん。得意じゃないけど、好き」
たいしたものは作れないんだけど、お菓子作りは昔から好きなんだ。
ドーナツ屋さんのドーナツが、どうしてあんなにおいしいのか、自分で作りたくてハマッたことがある。
試行錯誤の末、大好きなフレンチクルーラーみたいなのは作れなかったけど、ちょっとイイ感じのが作れるようになった。
レモン味のコロコロしたボールみたいなドーナツ。
ゆるめの生地にレモンの果汁と、すりおろしたレモンの皮を加えて、熱した油にスプーンですくって落とすんだ。
ぷくぷく浮かんできたら、油を切って冷ますの。
仕上げに茶こしでサラサラの粉砂糖をふりかければ出来あがり。
名付けてレモンボール。
食べるとフワッと柔らかくて、口の中にレモンの香りが広がるんだ。
そういえば学校に持ってったこともあったっけ。