今夜、きみの手に触れさせて
「あれ、すっごいおいしかったよ。レモン味のドーナツ」
律ちゃんがそう言ってくれた。
「ホントに?」
「うん。あれを作っていって、矢代くんのハートをゲットしちゃう?」
なんて、冷やかすように律ちゃんは笑う。
「えーと……反対しないの? 矢代くんのこと」
律ちゃんがこんなに応援してくれるとは思わなかった。
「う~ん、修吾はやっぱり矢代くんのことが特別好きみたい。絶対優しいやつだって言い張るし。
しっかり者の青依まで心を奪われるんだから、ちょっと判断できなくなっちゃった」
えへへ、と律ちゃんは笑う。
「だからまぁ、ちょっと偵察? 何も『好き』って言いにいくわけじゃないんだし、
そうやって、わたしじゃなくて青依が、少しずつ彼のことを知っていければいいんだ、なんて」
やっぱすごい、律ちゃん。
「けど青依を傷つけるような人だと、許さないんだからね」
と、律ちゃんはちょっと恐い顔をした。
いや、つきあってないから大丈夫。