今夜、きみの手に触れさせて
そして夏休みになって初めての日曜日。
わたしは矢代くんちのアパートの前に立っていた。
前に一度来たことがあるから、迷わずに来れたよ。
自転車を停めて、空を見あげる。
太陽がまぶしい。
真っ青な空に、入道雲がもくもくと大きく湧きあがっていた。
今日は修吾くんの柔道部の試合があって、応援に行ってる律ちゃんとは、その帰りに落ちあうことになっていた。
矢代くんの家に着くのは4時過ぎになるって聞いてたんだけど、
『早く終わったから、修吾と先に行っとくね』って、1時間以上前にメールが来ていた。
今が4時過ぎ。
連絡を受けて急いだんだけど、てんで間に合わなかった。
だって今日は朝から大忙しだったんだよ。
ドーナツ作りは生地を寝かせたり、冷ましたりするのにも時間がかかるし……。
それよりも何よりも、自分の身支度が大変だった。
何を着ていくか全然決まらなくて、ベッドの上が服だらけになっちゃった。