今夜、きみの手に触れさせて
「うちはオレと母親だけだし、母親の仕事は休みが不定期だから、今日も出勤」
「そうなんだ……」
恥ずかしい。
はりきって、こんなにいっぱい作ってきた理由がなくなる。
絶対、気味悪く思うよね、矢代くん……。
「あの、律ちゃんと修吾くんは? こっちに来てるはずなんだけど」
「修吾? 来てねーけど。どっか寄り道してんじゃね?」
そうなのかな……?
「……オレは?」
と矢代くんは聞いた。
「え?」
「食ってもいいの? それ」
「あっ、もちろんだよ。そのために作ってきたんだもん! あの、えっと、アイスおごってもらったお礼だからっ」
気持ち悪く思われないように、必死で理由を後付けする。
だけど矢代くんは、そこはスル―で
「へー、手作りなんだ?」と言った。