今夜、きみの手に触れさせて
ガツンと、顔面に衝撃が走る。
ツ……ッ。
痛い、と言うより熱い。
薄く開けた目に、もう一発振りあげられた拳がぼんやりと映る。
「一ノ瀬。やっぱお前、せこいヤローだな」
低くかすれる修吾の声が、いやにはっきりと聞こえた。
「あ?」
オレに馬乗りになっている男は手を下ろし、すぐ横の大木のほうへ目をやる。
こいつが一ノ瀬か。北中のトップだとか言ってたっけ……。
「なんか言ったか、今」
一ノ瀬が修吾をいたぶるように聞いた。
「たかだか7、8人を相手に、そっちは20人かよ? ハッ、必死だな」
修吾がバカにしたように吐き捨てた。
オレが来るまで、一ノ瀬に散々殴られたんだろう。
修吾は顔中血まみれで、瞼が腫れ上がっている。
そして、まだ両側から体を押さえつけられていた。
それでも目だけはギラギラと光っていて、
修吾はその目で、真っ直ぐに一ノ瀬をにらみつけていた。