今夜、きみの手に触れさせて
「り、律ちゃん!」
「青依!」
すべり台のところに行くと、律ちゃんが先に着いていた。
話すことがいっぱいある。
「あのね、矢代くんがわたしのこと、名前で呼んでくれたんだよ」
『月島』って。
『青依ちゃん』って。
ウソみたいでしょ?
「わたしのこと覚えててくれてたの!」
まくし立てるようにしゃべるのを、律ちゃんは笑顔で聞いてくれる。
「それからこれは、矢代くんが作ったかき氷!」
「ジャーン! こっちは修吾が作った焼きそばだよ」
すべり台の近くの低い柵にもたれて、わたしたちははしゃぎながら、それを食べた。
遠くでお囃子が聞こえる。
わたし、きっと忘れないな。
ブルーハワイとレモン。
オレンジ色のTシャツ。
わたしを呼んだ矢代くんの声も、
一瞬触れた冷たい指先も……。