今夜、きみの手に触れさせて
かき氷を両手に帰っていくあの子を、チラ見しながら、オレはガキの相手をしていた。
「はいよ、イチゴ」
「ん、おつり。オラ、こぼすなって」
水色の浴衣も、蝶々みたいな黄色い帯も、ずいぶん遠ざかってからでも、やけに目につく。
さっきも……。
あの子のまわりだけ、ぼんやりと明るく見えるのは、浴衣の色のせいか?
頭につけたデカい花のせい?
押しつぶされそうになりながら、大真面目に踏んばって並んでいたあの子。
そのくせ、いざ自分の番になると、注文もできずに他のやつらに先を越されてばっかで。
そのうちに、押されてどっか飛んでっちまうし、
無事注文できそーだと思ってたら、突然あきらめて、とぼとぼと帰ってくし。
いちいち謎すぎる……。
思わず呼びつけて、かき氷を持たせてやったら、マジうれしそうに目を輝かせた。
そんなに食いたかったのか……?