今夜、きみの手に触れさせて


「北見呼べや」


オレを見下ろしながら、低い声が唸った。


「どーやって?」


なんとか上半身を起こしながら、オレはその視線をたどる。


「はっ? 電話しろよっ」


イラつく一ノ瀬。


「ケータイねーもん」


しれっと言ってやった。




「ウソつくな、わかってんだぞ」


いきなり胸を蹴られ、その反動で頭をアスファルトに強打する。


う……。今のは、きいた。




頭よりも胸。


蹴られた胸が痛くて、息ができない。


さらに繰り出されるキックから胸や腹をかばうため、横になった体をくの字に曲げる。




そんなオレを片ひざでガッと押さえ、一ノ瀬は乱暴にオレのポケットの中をまさぐった。


「出せっ、ケータイ」


「だから、ねぇって」


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