今夜、きみの手に触れさせて
散々チェックした挙げ句、オレが本当にケータイを持っていないことを知ると、やつは逆上しだした。
「てっめ―、北見の番号教えろっ。電話して呼び出せっ」
「知らねーし。いちいち覚えてるかよ、そんなもん」
一ノ瀬はオレの腹に片ひざをついたまま、拳をオレの胸にあてがった。
さっき蹴られて痛むところ。
グリグリと、やつは拳に体重をかけていく。
う……。
激痛が走る。
ヤバいかもしんない。
脂汗が吹き出してきた。
あー、肋骨……折れてるかも。
こいつ、それ知っててやってんだ……。
「だったら北見の家に連れてけっ」
「家なんか……知らねーって……。あいつとは、元々そんなに……親しくねーもん」
痛みで言葉が途切れる。
ブッ飛びそうになる意識の中で、あのケンカの日の修吾の顔が頭をよぎった。
あきらめなければ、負けないん……だっけ?