今夜、きみの手に触れさせて
「クッソ―」
一ノ瀬は立ちあがると、またオレを蹴りだした。
「クソ、クソ、クソ」
ガツッ、ガツッ、ガツッ。
うっ、うっ、うっ。
ムリだ……。降参。
修吾みたいにはなれねー……。
「一ノ瀬……」
それでも何とか修吾の真似をして、やつを睨みつけた。
「お前さー……困るんじゃないの? 修吾が来たら……」
「あー?」
「今日はお友達がいねーから、一対一……だぜ? したらお前、またヤラれちまうっしょ……?」
たぶんやつの顔色が変わった。
「何を―っ」
獣のような雄叫びをあげると、一ノ瀬は狂ったようにオレを蹴り続ける。
オレはただ地面に這いつくばって、体を縮めてるだけ……。
気が強いだけで、実力はねーのな。オレの場合。
だけど、オレ……、負けたくねー。
一ノ瀬にも、
修吾にも……。