今夜、きみの手に触れさせて
しばらくして、やつの動きが止まった。
見あげると一ノ瀬はケータイをかざして、のびてるオレを撮影するところだった。
クソ……。
とっさにVサインをして、カメラ目線でニカッと笑う。
気だけは強ぇーんだ、オレ。
「チッ、ナメやがって」
また蹴られるかと思ったけど、一ノ瀬はそう吐き捨てただけだった。
オレを撮るのはやめて、もうケータイをポケットにしまってる。
「お前みたいなショボいやつに勝ったって、何の意味もねー。こんなの写メしても、恥かくだけだ」
は? 散々痛めつけたあげく、それかよ。
「北見じゃなきゃダメなんだ。北見をヤッて、あいつの泣きっ面をみんなに送るんだ。そのためにあいつを探しに来たのに……」
一ノ瀬は悔しそうに唇を噛んだ。
「仲間にリベンジを誓ってきたって……わけか」
地べたから起きあがれないまま、オレがそうつぶやくと、やつはその言葉にキッとなる。
「仲間? どこが仲間だ、あんなやつら」