今夜、きみの手に触れさせて
「逃げ出すんだぜ。笑うだろ。親が離婚するから、母方の実家について行くってわけ。
元々高校へ入るタイミングで引っ越すはずだったんだけど、あいつら気に入らねーし、一緒にいてもしゃーねーから、前倒しにしてもらった」
「へぇー……」
やけにヘビーな打ち明け話だった。
「明日引っ越しでさ、このまま逃げるのもしゃくにさわるから、北見をつぶして証拠写真をメールしとこうと思ったんだ。
オレが強いってことだけ、あいつらに見せつけておきたかった」
「なるほどね」
一ノ瀬の話を聞きながら、オレはなんとか立ちあがろうとするんだけど、体中が痛くて力が入らなかった。
あきらめて、地面に転がったまま空を見あげる。
「なぁ、一ノ瀬」
「あ?」
「たぶん……」
これ言うと、また蹴られるかな……?
そう思ったけど言っておきたいことがあった。