今夜、きみの手に触れさせて
「お前は、修吾には勝てないよ」
一ノ瀬はジロリとオレを見下ろす。
「北見は……強いな。デカいし」
低くそう言っただけで、こいつ、もう蹴るのはやめたみたい。
「いや、ケンカならお前だって相当強いし、わかんねーけど……」
そこで俺は言葉を切った。
「けど、なんだ?」
一ノ瀬が続きを促す。
「あのケンカの日……、もし修吾がお前に負けたとしても、オレらはみんな修吾を好きだったと思うよ。
あいつが泣きながらお前のクツを舐めたとしても……、オレはやっぱり修吾が好きだ。ずっとずっと一緒にいたいと思う。
……それが修吾の強いところだ」
「…………」
「まー、そこがムカつくとこなんだけどさ」
一ノ瀬は無言でオレの話を聞いていた。