今夜、きみの手に触れさせて


夏休みも終盤。


夜、塾帰りにわたしはひとりで自転車を走らせていた。




ここ、ちょっと怖いんだよね~。


人通りの少ない道。


真っ黒なアスファルトを、街灯が照らしている。




え?


今、路地から何か突き出ているのが見えた。


人の足……みたいな?


まさかね。




通り過ぎた道を振り返る。


やっぱり、そう。


裸足の足先が、転がって見えた。




自転車にまたがったまま、クイクイと足で道路を蹴りバックする。


うそ……。人が倒れている。




酔っ払いのおじさんとかじゃなくて、普通に若そうなんだけど?


どうしちゃったんだろう?


ま、まさか、死体とかじゃないよね……?




とりあえず自転車を降りて路地の入口に停めた。


恐る恐る一歩ずつ近づいていく。


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