今夜、きみの手に触れさせて


え、


「矢代くん……?」


横たわったまま伸ばした矢代くんの手が、キーを押すわたしの手を掴もうとしていた。


「だっ、大丈夫なのっ?」


ケータイを取り落とし、矢代くんのその手を両手でとる。






「なんで……いるの?」


ひとり言みたいにそうつぶやいた矢代くんは、どこかぼんやりとわたしを見ていた。




「あ、あのね、塾の帰りに偶然見つけたの。人が倒れていて……、助けようとしたら矢代くんで……」






「青依ちゃん……」


矢代くんはやっぱりぼんやりと、そして不思議そうにわたしを見ている。


「なんで……泣いてんの?」


「え」


気がついたら、涙がポロポロこぼれていた。




「だって、ビックリして……、それから、ホッとして……」






「ゴメンね」


矢代くんの目が優しく笑った。


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