今夜、きみの手に触れさせて


ドキッと動揺して手が緩み、

両手の中の矢代くんの手が、ストンと、地面に落ちた。


また気を失ったのかと思って、あわてまくる。




「だっ、大丈夫っ? 矢代くんっ! 矢代くんっ! しっかりしてっ!」


叫ぶようにそう言うと、矢代くんはパチンと目を開けた。


「い、今、救急車呼ぶからねっ!」


大声でそう励まし、わたしがケータイを拾おうとすると、彼はつぶやく。



「プ。それは、やめて」




「じゃあ、警察? 誰かに襲われたんだよねっ?」


「それ、もっとヤバいよ。オレ補導されちゃうっしょ」


矢代くんはそう言ってから「プクク」と小さく笑い、それから「うう……」と苦しげに顔を歪めた。



「笑うと、イテー……」




え、で、でも、救急車呼ばなくて、ホントに大丈夫なのかな……?


心配になって、矢代くんをじっと見つめる。




だって、様子が急変でもしたら大変。


わたしがしっかりしなくちゃいけない。


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