今夜、きみの手に触れさせて
なのにそんなわたしを、矢代くんはやっぱりおかしそうに見あげている。
「ゴメン……。あのね、修吾に電話してくれる?」
それから彼はそう言った。
「あ、うん。修吾くんの番号知らないから、律ちゃんに聞いてみる」
ケータイをとり、律ちゃんに電話しようとすると、矢代くんはそれをとめる。
「いや、番号言うから」
続けて彼は「080……」って、電話番号を空で言った。
それを聞きながら、わたしはキーを押さえていく。
「すごい。覚えてるんだね、修吾くんの番号」
感心してそう言うと、
「便利だからな」
なんて矢代くんは笑った。
「あ、留守電……」
修吾くんが出たら彼と代わろうと思っていたのに、呼び出し音は無機質なアナウンスに切り替わる。