今夜、きみの手に触れさせて


「貸して」


横になったまま差し出した矢代くんの手にケータイを乗っけると、彼は留守電にメッセージを残した。




『修吾? 一ノ瀬に襲われた。3丁目の電気屋の横の路地でブッ倒れてるから、迎えに来てよ』


それだけ言って電話を切る。




「え、大丈夫かな? わかるのかな、修吾くん」


これだけじゃ留守電が入ってること自体、気がつかないかもしれないし、


わたしのケータイからかけたから、知らない番号にかけ直してくれるかわからない。


それに矢代くん、今、名乗らなかったよ?




心配になってそう聞いても、当の本人は全然平気そう。


「来るよ、あいつ」


なんて、ケータイを返してくれた。




「ゴメン。汚した」


見ると、ピンクのケースの端に血がついていてドキッとする。




ケガ……ひどいんだよね。


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