今夜、きみの手に触れさせて


寝転がったままこっちを向いていた顔を戻して、矢代くんは天を仰いだ。


「ありがと、青依ちゃん。もう大丈夫だから帰って」


「えっ、でも」


「遅くなると危ねーし」




天を仰いだまま、矢代くんは胸のあたりに置いた手のひらを立てて、指先だけひらひらとさせる。


バイバイって意味。




「で、でもっ、修吾くんが来なかったら、どーするの? もう連絡できないよ? ケータイ持って来てないんでしょ?」


わたしのを借りるくらいなんだから……。


「やっぱり修吾くんとは、つながるまでかけ直した方がいいと思う。わたしここに残るね」


きっぱりとそう言うと、矢代くんは少し驚いたようにこっちを見た。




「じゃあ青依ちゃん、家帰ってから、もう一度修吾に連絡入れといて……」


「いやっ、帰らない!」


矢代くんの言葉とかぶり気味に、思いのほか大きな声が出た。


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