今夜、きみの手に触れさせて
「そっか、月島のケータイから連絡くれたんだ?」
「う、うん。偶然通りがかって……」
あわてているのか慣れっこなのか、修吾くんは矢代くんのジョークには一切取り合わない。
「大丈夫なのか?」
だけど大いに心配はしている。
「ろっ骨ヒビ入った。たぶん」
「ええっ?」
と叫んだのはわたし。
そ、そんなにひどいの……?
「じゃ、今から救急病院行こう」
修吾くんがそう言ったけど、矢代くんは首を横に振った。
「明日行くからいーよ。あばらなんて、どーせギブスとかはめられないんだし、保険証も持ってきてねーしさ」
「まーこの時間じゃ、レントゲンも明日になるだろうからな。とりあえず家まで送るか」
それから修吾くんはわたしを見る。
「先に月島を家まで送ってから帰ろう」
「うん」
返事をしながら立ちあがろうとした矢代くんを、ふたりで支える。
「何されたんだよ、一ノ瀬に」
それから矢代くんたちは少しだけケンカの話をしていた。
めちゃくちゃ蹴られたらしい。