今夜、きみの手に触れさせて


「あ、あの、わたしひとりで帰れるから」


自転車のところでふたりに告げる。


矢代くんはもう修吾くんの自転車の後ろにまたがっていた。




「遅いから危ねーし、ついてって月島が家に入るの見届けてから帰るよ」


修吾くんがそう言ってくれる。


「な、純太」


「うん」


矢代くんはいつもの無口な彼に戻ったみたい。




「でも、ケガしてるんだし、早く帰ったほうがいいから」


「大丈夫だよ、少し寄るだけだから。な、純太」


「うん」


「月島が連絡くれてホントに助かったんだ。ありがとな」


修吾くんは爽やかに笑う。




「な、純太」


「うん」


「『うん』じゃなくて、お前もちゃんと月島に礼言えって」


修吾くんに怒られて、矢代くんはちょっとふてくされた顔をした。




「さっき、もう言ったし」


< 234 / 469 >

この作品をシェア

pagetop