今夜、きみの手に触れさせて
お礼どころか、実は矢代くん、さっきからずっとわたしを見つめている……。
だから今、無遠慮で意味深な目線にドギマギしているところ。
そんなこととは知らない修吾くんは、
「ホントに?」ってわたしを気づかってくれる。
「うん。ありがとって言ってくれたよ、矢代くん」
わたしは、矢代くんから視線をはずしてコクコクとうなずいた。
「そっか。ならいーけど」
ホッとしている修吾くんは、なんだか彼の保護者みたい。フフ。
自転車2台。夜道を連れ立って走る。
家に着いて自転車を停め、門の前でお礼を言った。
「ありがとう。うちここだから」
「おう、月島、今日はサンキューな」
自転車にまたがったまま地面に足をつき、修吾くんが言う。
「ううん。気をつけて帰ってね」
「じゃー」
修吾くんと交わす会話。
矢代くんは入って来ない……。
修吾くんの脇腹あたりに片手を回して、彼は荷台に座ってこっちを見ていた。