今夜、きみの手に触れさせて
修吾くんは、なぜかわたしのほうを見てペコペコと頭を下げると、また自転車にまたがった。
『うちの子が、どーもすみません』って謝るお母さんみたいで、ちょっとおかしい。
優しいな、修吾くん。
わたしにじゃなくて、矢代くんに対して……。
大きなダダッ子を乗せて、自転車は闇に消えていった。
『愛してるよ』
あの矢代くんからの、まさかの言葉。
ふざけたのか、軽めにそーゆーこと言えちゃう人なのか、いまだわからないまま声だけが蘇る。
スラッと涼やかな表情とともに……。
今夜はとにかく
眠れそうにないや……。
月灯りの下で交わした言葉も、
触れた温もりも、
胸の中で、熱く熱く息づいていた。