今夜、きみの手に触れさせて


修吾くんは、なぜかわたしのほうを見てペコペコと頭を下げると、また自転車にまたがった。


『うちの子が、どーもすみません』って謝るお母さんみたいで、ちょっとおかしい。



優しいな、修吾くん。

わたしにじゃなくて、矢代くんに対して……。



大きなダダッ子を乗せて、自転車は闇に消えていった。








『愛してるよ』




あの矢代くんからの、まさかの言葉。


ふざけたのか、軽めにそーゆーこと言えちゃう人なのか、いまだわからないまま声だけが蘇る。


スラッと涼やかな表情とともに……。




今夜はとにかく


眠れそうにないや……。




月灯りの下で交わした言葉も、

触れた温もりも、




胸の中で、熱く熱く息づいていた。







< 237 / 469 >

この作品をシェア

pagetop