今夜、きみの手に触れさせて
「転校? 一ノ瀬が?」
「うん。だからその前にお前をつぶしたかったんだってさ。
でもまー、あきらめはついたみたいだな。なんかスッキリした顔して帰っていったし」
「は? お前をこんな目にあわせて『スッキリした』はねーだろ」
修吾は悔しそうに吐き捨てた。
「バーカ。オレだって一方的にやられてたわけじゃねーぞ。あいつもろっ骨の2、3本はいかれてんじゃねーの?
まー、お互い様ってとこだ」
とウソをつく。
すると修吾は一瞬言葉に詰まり、それから困ったように眉を下げて、曖昧に笑った。
「そー……」
ム。ウソはバレたようだ。
でもまー、オレの気持ちは伝わったみたい。
もーいんじゃね? 一ノ瀬の件は。
そりゃ痛いし卑怯だしムカつくけど、なんだか憎みきれない気持ちになっていた。
めんどくせーしな。