今夜、きみの手に触れさせて
「修吾、ホント、オレの元カノたちキライな」
呆れて肩をすくめる。
「そりゃそーだろ。あいつらお前のこと、全然本気じゃなかったじゃん。騒ぐわりに、すぐに男乗りかえてさ。
純太とつきあってんのに、オレのこと誘ってくる子もいたんだぜ。
『ホテル行かない?』って」
思い出したのか、修吾は唇を噛んだ。
「ハハ、行けばよかったじゃん」
「行けるかっ」
修吾にはわからない。
「だからいーんだよ、楽ちんで……」
そう言ってやった。
「体だけのつながりな」
吐き捨てるように修吾は言う。
「案外癒されてたけどね」
「オレにはお前が、自分を傷つけてるようにしか見えなかった」
待合の壁時計は、まるで時を刻むのを忘れてしまったかのように、ただそこに貼りついていた。