今夜、きみの手に触れさせて
「そりゃよかった」
ヤスはチラッとオレを見た。
「なんか心配なんだよな~。純太、手ー早そーだし」
「別にオレは……」
「なんたって、つきあう前にキスしちゃうんだもんな」
オレの言葉をさえぎって、ヤスは耳元でささやいた。
えっ、昨夜のことか?
と驚いたけど、前に神社で乱闘した日のことを、ヤスはまだカン違いしているらしい。
「まー、キスぐらいならいーけどさ」
なんて言われる。
すると、反対側から修吾が身を乗り出した。
「ヤスはどーなんだ?」
「何が?」
「翔子とは、もうキス以上のこと……しちゃってんの?」
こいつ……なんでこんなに恋バナをしたがる。
キモいぞ。
「まだだよ」
しかしヤスはケロッと答えた。
へぇ~。……ちょっと意外。
「え、そーなのか? お前らもう2年近くつきあってんのに」
と、修吾も予想外だった様子。