今夜、きみの手に触れさせて


だけど……


昨夜あの子は、なんで逃げなかったんだろう?




オレのキスに、そっと目を閉じたあの子。


長いまつ毛が涙で濡れていた。


自分から目を閉じたくせに、唇は微かに震えていて……


それがたまらなく愛しくて、ガラにもなく胸がカアッと熱くなった。




だけどやっぱ信じらんなくて


『好きになってもいいの?』って聞いたら、


あの子は小さくうなずいたんだ。




告ったわけではないけれど、


あれは……そー思っていいんだろうか?




誰とでもあーゆーことができる子じゃないよな、きっと。


だったらなんで、こんなオレと……?






目を閉じると、あの子の顔が浮かんだ。


半泣きになりながらオレを心配してくれるあの子が、可愛くて、ウソみたいで、


どーしても触れたくなったんだ……。




ヤスに怒られちまうよな。感情のままにあーゆーことすると。




だけどオレ、初めてだったんだぜ。


あんな気持ちで女の子にキスをするのは……。




ったく。修吾のこと笑えねーし……。





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