今夜、きみの手に触れさせて
「電話しろよ」
修吾が言った。
「あー、後でな」
「今しろ。純太すぐめんどくさくなるだろ?」
「ならねーよ」
「今かけろって」
と修吾はしつこい。
「お前に聞かれんのがヤなの」
そう答えたら、修吾はいきなり立ちあがった。
「んじゃ帰る」
いつもだと自分ちのようにくつろいでいく修吾が、立ったままラーメンをかっ込むと、本当に帰っていった。
「めんどくさがらずに電話しろよ」
なんて言い残して。
いや……あいつはオレをなんだと思ってんだ?
この状況で、めんどくさいとか思わねーし。
ただ……。
紙っ切れに残された数字をじっと眺める。
いざこーなると、あの子に電話して何を言えばいいのか、正解がわからなかった。
あの子は今、どー思ってんだろう?
あの夜のキスのこと……。